就労継続支援B型事業所 S社様の事例
〜あらたなビジネスモデルをつくる〜
S社様を支援したのは、2019年の秋ごろでした。「アートを活かした就労継続支援B型事業所をつくりたい」というのが代表のN社長の想いでした。
自らを三日坊主、好きな言葉は破天荒というN社長の座右の銘は、高杉晋作の辞世の句「おもしろきこともなき世をおもしろく すみなすものは心なりけり」です。
今では社是ともいうべき「すべてはおもしろいと思える瞬間を増やすために。」という言葉にみごとに昇華させています。
そんなN社長ですが、当初、お会いしたころは障害者のみなさんが創り出すアートを中心に、何かと掛け合わせて就労継続支援B型事業所を開設したいというものでした。
【当初のビジネスモデル】
社長はあるとき街で見かけた障害者の方々の絵に衝撃を受け、なんとかそれを使ってビジネスにつなげ、障害者のみなさんを支援したいと思ったそうです。
ただ、このビジネスモデルには重大な欠陥がありました。それは、評価の定まらないアートをビジネスモデルの根幹に据えているということです。では、なぜ、それがビジネスモデルの重大な欠陥なのでしょうか。それは、評価の定まらないアートをビジネスの起点にすることでは、繰り返し同じ成果を出せるかどうかがわからないからです。
ビジネスモデルとは、常に同じことを繰り返すことで同じ成果につなげられる仕組みのことを言います。そのためには、不安定要素をできるだけ排除していくことが重要なのです。
N社長とは何度も何度も面談し、長い時間をかけてコンサルを行いました。最初からお金を稼ぐことが目的の創作活動で、良い作品が生まれるとは思えません。隣県のアートを中心にした支援事業所では、母親の「お金になる絵を描きなさい」という言葉に、利用者の方がお金の絵を描いたという、なんとも笑えないエピソードがあったりします。
そんな長いコンサルの結果、N社長が導き出したのが、お金を稼ぐ収益事業と創作活動を分離するということでした。利用者様が、介護施設のお掃除や軽作業でお金を稼ぐ収益活動を行う一方、アート等の創作活動を行う。その間を利用者様が行ったり来たりするというビジネスモデルをN社長と構築しました。それは同時に、社長が求めていた純粋にアートを創作する「ファインアート」への道も、実現することになりました。
【あらたなビジネスモデル】
S社様の就労継続支援事業所には、初めてアートを描きだしたという利用者の方々もたくさんいます。たぐいまれな集中力で急激な成長を遂げていく方もいます。長年、頭痛、振戦(しんせん:手足のふるえ)に悩まされていた利用者の方も、アートに取組むときはぴたりとそれらが止まるといいます。
また、N社長のよいところは利用者の方々が描いた原画をけっして販売しないということです。代わりにそれらをプリントしたTシャツやバッグを製造し、販売しています。最近では、美術館の絵画のようにそれらを貸出すということもビジネスとして始めました。それらのビジネスを、何度でも刈り取れるということでリカーリングビジネスと言います。
あらたに構築したS社のビジネスモデルを核に次々と新しいビジネスチャンスが生まれています。利用者のみなさんと同じように、S社様の今後の成長が楽しみです。